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睡眠薬は正しく服用すればこわい薬ではありません
【城戸】 どうして、日本人は他の国よりもアルコールに頼る割合が高いのでしょうか。
【内山】 これという理由はあげにくいのですが、日本の特に男性の場合は体調がすぐれなくても多忙などを理由になかなか病院へ行こうとしない傾向があります。また、男社会の風潮として眠れなくて睡眠薬を飲むのは意思が弱いからだとか、眠れなければその分仕事をすればよいといった間違った考え方があります。ですから、たかだか不眠ぐらいとアルコールでごまかしてしまうケースが多いのかもしれません。実際に今回の調査でも、睡眠薬の服用率は他の国に比べて日本は非常に低い結果が出ています。
内山 真(うちやま まこと)
内山 真(うちやま まこと)
1954年、横浜生まれ。1980年、東北大学医学部卒業。1992年、ドイツ ヘファタ神経学病院睡眠障害研究施設に留学。2000年、国立精神・神経センター精神保健研究所 精神生理部 部長
【城戸】 睡眠薬と聞くと、私たちはどうしても抵抗があります。また睡眠薬に関する情報がとても少ないように感じるのですが…。
【内山】 睡眠薬のイメージが悪いのは、昔に有名な人の睡眠薬自殺の例があるからではありませんか?確かに昔の睡眠薬は大量に服用すると死に到ることがありましたが、その後80〜90年代にかけて安全性が大きく改善されマイルドな睡眠薬が開発されています。いずれも睡眠薬という同じ名前で呼ばれていますが、別の薬だと認識していただいた方がよいでしょう。最近はクセになりにくいものも発売されています。
【城戸】 あと、長年飲んでいるとボケるのではないかとも言われていますが…。
【内山】 これもよくいわれることですが、医師の指示通り正しく服用している限りそのような心配はありません。乱用したりアルコールと一緒に服用すると一時的に記憶がなくなることがありますが、ボケる、痴呆ではありません。規定の量を正しく服用している限り睡眠薬はこわい薬ではありません。
加齢とともに増える睡眠のトラブル
【城戸】 ところで、私たち日本人の5人に1人が睡眠に関する悩みを自覚しているということですが、実際に睡眠のトラブルを訴える患者さんは増えていますか?
【内山】 一般にストレスの増加に伴って不眠症が増えると思われがちですが、原因はそれだけではありません。ストレスの程度を測るのは難しいのですが、たとえば50年前、さらに大昔でも形は違ってもストレスはあったはずです。それよりも、現在の日本で不眠症が増えている理由として高齢人口の増加が考えられます。一般に加齢に伴い不眠症になりやすいのですが、そういった意味では日本はこれから確実に睡眠の悩みを訴える人が増えてくると思われます。
【城戸】 どうして、歳をとると不眠を訴える方が増えるのでしょうか。
【内山】 人間は歳をとると必要な睡眠時間が短くなるのですが、皆さん若い頃と同じようにたくさん眠ろうと努力されるんですね。たとえば、社会で働いている男性が現場から管理職になったのを機に健康のために早寝をしようと思いつく。ところが、早く寝たものの、逆に熟睡感が少なくなってしまった。こういうケースは非常に多いんですよ。睡眠はたくさんとればよいというものではありません。身体が要求しているより長く床に就いていると、逆に睡眠は浅くなってしまうのです。ですから、高齢者に多い早朝覚醒、いわゆる朝早くに目が覚めて困るという方には、なるべく遅めに床に就くようアドバイスしています。寝酒に頼るよりも、まずはそういった睡眠の工夫が大切です。

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