35歳から59歳(平均年齢43.8歳)の働く世代6084名を対象に生活習慣病と睡眠に関する調査を行ったところ、高血圧症、高脂血症、糖尿病いずれかの生活習慣病を持つ人は、不眠の悩みを抱える割合が高いという結果が得られました。また、複数の生活習慣病を持つ人、生活習慣病の指摘を受けながら放置している人ほど、不眠の訴えが多いこともわかっています(図1)。これらの生活習慣病患者さんの睡眠に関して、睡眠の総合的な質、昼間の眠気についてそれぞれ評価したところ、いずれも生活習慣病を持つ人の方が睡眠の質が悪く、とりわけ指摘を受けながら放置している人は睡眠の質、昼間の眠気ともに非常に悪いという結果が得られています。
不眠はうつとも深い関係があります。生活習慣病を持つ人は抑うつ状態を認めることが多く、なかでも不眠の悩み経験を持つ人ほど、抑うつ状態が高い傾向がみられます。たとえば生活習慣病で通院中の患者さんでは、不眠の悩み経験がない人の1.5%に抑うつ状態がみられるのに対して、不眠の悩み経験がある人は16.0%と、約10倍も高い抑うつ傾向が認められました。不眠の悩み経験と抑うつの関係は、生活習慣病の指摘の有無、治療の有無に関わらず深い相関関係を示すことがわかります(図2)。また、生活習慣病を持つ人の睡眠の質、うつ状態を男女別に比較すると、生活習慣病になる割合は男性の方が高いものの、女性の生活習慣病患者さんの方が睡眠の質、抑うつ状態いずれも男性に比べて深刻であることもわかっています。
ところが、このような不眠の悩み経験を持つ人は、約4人に1人しかその悩みを医師に伝えていません。生活習慣病のいずれかで定期的に通院中の患者さんでさえ、かかりつけ医に不眠の悩みを訴えているのは約40%でした。逆に、医師から「眠れていますか?」という質問を受けた患者さんの割合も約30%にとどまっています。これは、たとえ生活習慣病で通院していても、患者さんと医師の双方において、生活習慣病と不眠の相関関係があまり認識されていないという現状を示す結果と受け止めることができます。
眠れないときの対処法としては、医師に相談して処方薬をもらっている人はわずか17.1%で、市販薬を飲んでいる人が7.4%、寝酒が30.5%、何もしていない人が43.1%と、ほとんどの人がきちんとした対策をとっていません。この不眠に対する対処法別に昼間の眠気を調べてみたところ、医師の処方薬を利用している人が昼間の眠気がもっとも軽く、昼間の活動状態が優れていることがわかりました。
今回の調査結果から、生活習慣病と睡眠の質、抑うつ状態との間には深い関係が認められました。不眠や生活習慣病を放置して抑うつ状態に陥らないためにも、睡眠の悩みは早めにかかりつけ医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。




図1:生活習慣病患者さんの不眠の悩み









図2:不眠とうつの深い関係