高血圧症は生活習慣病の代表的な疾患で、現在、わが国では約3500万人の患者さんがおられます。一般に収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上のいずれか一方に当てはまると高血圧症と診断されます。また、高血圧症患者さんの30〜50%が不眠など、何らかの睡眠の問題を抱えているといわれています。
睡眠は心臓病との関連も指摘されており、たとえば狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患は睡眠時間が9時間以上あるいは5時間未満で発症しやすくなるという報告があります。睡眠不足は翌日の血圧上昇の原因にもなります。あるデータによると、平均8時間睡眠の方と、残業などによる睡眠不足で平均3.6時間睡眠の方の血圧および心拍数を比較したところ、睡眠不足が翌日の血圧や心拍数に悪影響を与えることが明らかになりました(図1)。さらに、入眠障害や中途覚醒などの不眠が高血圧症の発症率を高めることもわかっており(図2)、高血圧症の予防および治療においては、よりよい睡眠状態を保つことがいかに大切であるか、おわかりいただけると思います。
現在、私たちの施設では血圧コントロールおよび生活習慣改善の三本柱として、1)よく食べ(栄養)、2)よく動き(運動)、3)よく眠る(睡眠)ことを心がけていただくよう、患者さんにご提案しています。これまで生活習慣病の改善策としては主に栄養指導、運動指導が中心となっていましたが、今後は睡眠指導がより重要になるものと思われます。
もう一つ、睡眠に関する話題として睡眠時無呼吸症候群(SAS)があります。いびきに悩む方やSASの患者さんは、すでに多くの方が肥満や糖尿病、高血圧症などの問題を抱えておられます。SASはまさに生活習慣病の重症型であり、死の四重奏(上半身肥満、耐糖能異常、高トリグリセライド血症、高血圧症)またはメタボリック症候群と呼ばれる、虚血性心疾患の危険因子を合併した病気であるといえます。
当施設では、いびきや眠気の訴えで来院した489名の患者さんを対象に睡眠に関する精密な検査を行い、SASとこれらの危険因子について検討しました。その結果、1時間に10秒以上の呼吸停止が30回以上(一晩に 210回以上)みられる重症SAS患者さんは 201名で、うち80%に肥満、50%に高血圧症、64.7%に耐糖能異常、60%に高トリグリセライド血症を認めました。これら4つを併せ持つ方も18.9%と高率にみられています。最近の研究では、SASが妊婦さんの流産・早産の原因になる可能性も示唆されており、妊婦さんの無呼吸を治療することによって健康な子どもが誕生しています。SASは単にいびきや事故の病気という捉え方ではなく、次世代につながる睡眠医療としてさらに発展するものと考えられます。









図1:睡眠不足は翌日の血圧上昇の原因


図2:寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めると?