糖尿病と不眠にはどのような関係があるのでしょうか。久留米大学病院・内分泌代謝内科の糖尿病専門外来を訪れた患者さん156名を対象に睡眠調査を実施したところ、患者さんのおよそ38%が入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などの不眠症状に悩んでいるという実態が明らかになりました(図1)。これは、なんと健康な人の2倍以上になります。
糖尿病患者さんの不眠の原因としては、1)不眠を呈しやすい生活環境や習慣、勤務内容・時間によるもの、2)糖尿病患者さんに合併しやすい精神や運動、呼吸の障害によるもの、3)糖尿病の症状や高血糖に起因する不眠、の3つが考えられます。糖尿病患者さんに合併しやすい精神、運動、呼吸障害としては、うつや不安障害、糖尿病の増悪因子である肥満や加齢に伴う睡眠時無呼吸症候群、脊椎や足の関節の変形に伴う疼痛やしびれなどが考えられます。糖尿病による不眠は高血糖に伴う喉の渇きや夜間頻尿、高血糖に伴う生体内反応など、疾患自体が不眠を引き起こすことが知られています。特に、糖尿病神経障害による疼痛やしびれがある場合は50%強の患者さんに中途覚醒を認め、うち30〜40%の方は熟睡感の得られない状態が続いていることがわかりました。さらに、糖尿病自律神経障害に伴う胃腸症状、動脈硬化症や脳梗塞によるしびれ、そして糖尿病自体や治療に対する不安感、不満感なども不眠の原因となっています。
通常、糖尿病の初期や血糖コントロールが良好な患者さんでは不眠の訴えはそれほど強くありません。不眠は糖尿病が増悪した患者さんに多いのが特徴です。糖尿病の増悪が不眠やうつを引き起こし、うつの発症が不眠を、さらにその不眠が糖尿病を増悪させるといった悪循環が生じると考えられています(図2)
現在、糖尿病治療は急性および慢性の合併症に焦点をあてた栄養指導・運動指導が中心になされていますが、糖尿病と不眠、うつの関連性は非常に強く、これをいかに是正するかが重要な課題と考えられます。不眠治療によって糖尿病が改善する患者さんは数多くいらっしゃるはずです。ところが、実際には患者さんは不眠に関する悩みを主治医にきちんと伝えておらず、主治医からも不眠について尋ねることが少ないのが現状です。
私の勤務する病院では、これまで糖尿病患者さんへの不眠治療によって血糖コントロールが良好になり、糖尿病そのものが改善するという例を数多く経験してきました。今後の糖尿病治療においては、医療スタッフと患者さんが共に糖尿病と不眠の密接な関係を理解し、いかによりよい睡眠を得られるようにするか、食事療法や運動療法に加えて、不眠への対応をしっかりと考えていく必要があると思います。


図1:糖尿病患者における不眠の実態















図2:スライドNo5
(糖尿病、不眠、うつ発症の悪循環)