35歳から59歳の働く世代を対象に実施した生活習慣病と睡眠に関する調査によると、有効回答者5,952名の約半数にあたる2,950人が高血圧、高脂血症、糖尿病いずれかの生活習慣病の指摘を受けていました。ところが、生活習慣病の治療に取り組んでいる人は少数派で、約73%の人は、指摘を受けながら未治療で放置していることがわかりました。
 生活習慣病がある人は不眠に悩む割合が高く、複数の生活習慣病をもつ人、生活習慣病の指摘を受けながら放置している人ほど、その割合は高い傾向がみられました(図1)。不眠は抑うつとも深い関係があり、生活習慣病を持つ人は抑うつ状態を認めることが多く、複数の生活習慣病をもつ人ほどその割合が高くなることもわかりました。

 ところが、不眠に悩む人は4人に1人しかその悩みを医師に相談しておらず、不眠に悩みつつ生活習慣病で定期的に通院している人でさえ、医師に不眠の相談しているのは約40%でした。逆に、医師から「眠れていますか?」という質問を受けた患者さんの割合も約30%にとどまっています。
 眠れないときの対処法としては、何もしていない人が42.6%、寝酒が29.8%、医師に相談して処方薬をもらっている人が20.3%、市販薬を飲んでいる人が7.4%でした。薬局で市販されている睡眠改善剤は、正しく服用しなければかえって睡眠の質を落としてしかねません。不眠症の改善は、医師によく相談して、それぞれの症状に応じた睡眠衛生と適切な睡眠薬を処方してもらうことが大切です。

 また、生活習慣病がある人は夜間頻尿により睡眠が中断される割合が高いことがわかりました。夜間頻尿は、回数が増えるにつれ睡眠の質が低下し、抑うつ状態も増加します(図2)。調査の結果では、夜間頻尿がない人で抑うつ状態がある人は4.1%であったのに対して、夜間頻尿が1回の人は7.5%、夜間頻尿が2回以上の人は16.1%と、夜間頻尿のない人に比べて約4倍の割合で抑うつ状態が高まっていました。今回の調査から、生活習慣病と不眠、抑うつ、夜間頻尿は相互に深い関係があることがわかりました。

 では、こうした不眠の悩みをもつ生活習慣病患者さんの睡眠を改善することで、生活習慣病の症状は改善するのでしょうか。生活習慣病患者さんの不眠に対して睡眠薬を処方したところ、睡眠薬の服用により、半数以上の患者さんが生活習慣病の症状の改善を自覚したと答えています(図3)
 不眠は夜間の交感神経を亢進させ血圧や血糖値に悪影響を及ぼすことがありますが、不眠の改善はこれらの悪循環を直接的に断つことにより生活習慣病の改善をもたらす有用な手段と考えられます。また、睡眠の改善により摂食ホルモンが低下するため食事療法が促進され、運動療法に取り組む意欲も促進されて、生活習慣病の改善につながります(図4)
 これまで、生活習慣病の治療はお薬と食事療法、運動療法が治療の中心になってきましたが、今後は睡眠改善を加えることで、より効果的な成果が期待できると思います。






図1:生活習慣病患者の不眠の悩み



















図2:夜間頻尿 頻度別睡眠、抑うつ状態


図3:睡眠薬服用前後での
    生活習慣病の症状変化


図4:考察生活習慣病への介入