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睡眠は心の健康のバロメーターです。ぐっすり眠れるようなら、まず大丈夫。逆に、不眠がみられたら心の健康は黄信号といえるでしょう。現代は「うつ病の時代」ともいわれており、一生の間にうつ病を経験する割合は男性の1割、女性の2割にも達しています。
一般に、うつ状態の方の約9割に不眠がみられ、不眠で病院を訪れる方の約半数はうつ病の患者さんです。不眠はうつ病の発症に先行してあらわれることが多く、持続する不眠はうつ病の危険因子になります。さらに、毎年3万人以上の尊い命が自殺により失われていますが、近年、社会問題となっている自殺はうつ状態やうつ病を患っているともいわれています。不眠はかかりつけ医に相談しやすい身体症状です。「眠れなければ、まず病院へ」、これは本日私が最もお伝えしたいことです。
 ストレス社会、高齢化社会ともいわれる現代は、まさに不眠と睡眠不足の時代です。国民の4人から5人に1人が不眠に悩んでいるとの報告がありますが、睡眠の質は加齢とともに低下し、特に65歳以上の女性では約半数が不眠の悩みを抱えています(図1)。
ここで気をつけていただきたいのは、不眠と睡眠不足は異なる、ということです。睡眠時間には個人差があるため、不眠は睡眠時間の長短で決まるわけではありません。不眠症とは目覚めているときに睡眠の不足感が強く、患者さん自身が身体的、精神的に社会生活を維持する事に支障があると判断している、つまり目覚めているときに苦痛を感じる状態をいいます。寝不足なのに昼寝ができなかったり、逆に寝ようと思わないときにうとうとしてしまったり、また昼間にイライラや不安、憂うつを感じるのも特徴です。一方、健康な人の睡眠不足は単に睡眠時間が短いだけですから、眠気が強く、場所を問わずすぐに眠ることができます。また、眠気以外の精神症状もみられません。

不眠の原因は大きく、1)時差ぼけや不適切な環境、交代勤務(Physiological)、2)身体疾患に伴う苦痛(Physical)、3)急性・慢性のストレス、喪失体験(Psychological)、4)薬物、アルコール(Pharmacologic)、5)うつ病などの精神疾患(Psychiatric)、の5つに分類でき、頭文字に共通してPがあることから「不眠の原因の5つのP」とも言われています。この中で最も多いのがうつ病です(表1)。
不眠症の方は不眠以外の症状がないかどうか、気をつけてみてください。うつ病は心身の病気ですから、食欲不振、体重の減少、疲労感・倦怠感、頭痛やめまい、性欲の低下、動悸・発汗・のぼせ・冷えなど、身体症状はなんでもありです(表2)。不眠症だと思っていたら実はうつ病だった、またはうつ病の前兆だったということは少なくありません。うつ病患者さんの約6割はうつ症状の発症に先行して不眠の症状がみられます。また、不眠はうつ病再発時に先行してあらわれることもあり、うつ病の再発を予防する有用な手がかりになります。理由は不明ですが、ある調査では、不眠が1年間継続するとうつ病を発症する危険性は40倍も高くなるという報告もあります。
うつ病の早期発見、早期治療のためにも、「眠れない」ときは、まず医師にご相談ください。不眠の慢性化を防止することが、何よりもうつ病の発症予防につながります。
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